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ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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余りにも有名な暴君ネロの時代
世界史オンチの私は、「ネロ=暴君」ということしか知識がなく、ネロがどのような政治を行ったかのごく一般的な教養すらももっておりませんでした。そのため、ネロが描かれるこの巻はある意味楽しみにしていたのですが、塩野氏が描くネロは(確かにわがままではあったにしても)単なる暴君ではなく、どこか憎めない人物として描かれます。
オリンピックを開催したり、自ら歌手として市民の前で歌ったり…と、やりたい放題。更に、母殺しに妻殺し、有能な将軍たちの理不尽な処分(自死命令)、キリスト教徒の処刑などなど…確かに書き連ねれば乱暴なことばかり。
それでも悪意に満ちた政治という訳でなく、就任後5年は善政であったと古代の史家も評価する皇帝であったことが分かります。塩野氏もどこか哀れみをもった表現で、「皇帝だったことさえ忘れたら愉快な若者」「善政はしたのだがそれが持続しなかっただけ」と評しています。その死後、ネロの墓には花や果物の供物が絶えなかったというエピソードからもネロの印象が大きく変わるのではないでしょうか。
やりたいことと、やらなくてはならないこと
母アグリッピーナの謀略により若くして皇帝となったネロは、自立とともに養うはずのバランス感覚を養い損ねた。皇帝という立場を理解しきることが出来なかったことが彼の盲点ではなかったか・・・最高の教師セネカを得ていたにも関わらず自制というものは学べるものではなかったようだ。歌を歌いにギリシアへ行ってしまったり、出すべき指示が極端すぎたり・・・と。ドラッカーがこの時代にいたら「なすべきことをやりなさい」と説教してくれたかもしれない。
ローマが大火に襲われた原因をキリスト教徒の放火と決め付け、残酷なまでの死刑の執行を指示した暴君ネロの行動が、後々のキリスト教徒迫害への先鞭をとってしまう。
善政の時に調子に乗らない慎重さが彼にあったら・・・と思わざるをえない。
ネロのイメージがかわった。
世界史の教科書では母親とセネカを殺し、悪政の限りをつくした皇帝として登場するローマ帝国5代皇帝ネロ。 しかし本書に書かれているように少し詳しく見ていくと、皇帝としての才能が全く無かったわけではなさそうである。 むしろ治世の前半期はなかなかよい政治を行っているように思える。 しかしあまりに簡単に人を殺しすぎたり、市民の誤解を招くような行動が多すぎたために、後々まで語り継がれるような悪帝の代表になってしまったのだ。
ローマ皇帝のかたち
暴君だったから殺されたのではなく、統治者として不適格であるから殺されたネロの物語。 母アグリッピーナの野望によって帝位に就いたネロ。元老院も市民も、ネロの登場を歓迎する。先帝の嫡子を殺し、母を殺しても、ローマ市民は黙認した。統治がうまくいっていた間は。だが、統治に不適格であると思われたとき、レス・プブリカの為にこのギリシアかぶれの繊細な若者は殺されたのである。 アウグストゥスが作り上げたローマ皇帝とは、ローマの住人の父であり、パトローネスであり、レス・プブリカの体現者であった。これほど労多くして実の少ない役もないと苦笑してしまう。帝国は実務を行う人々によって盤石であったにもかかわらず、不適格者の統治は許されなかったのだ。共同体意識の強い場合に良く見られる、すべての責任を一人に押しつける事で得られる安心感が、得られなかったために殺されたとも言える。血は、言い訳でしかなかった。 それにしてもこの母子を見ると、男は自分のちっぽけなレス・プブリカのためにも女を愛する方がよさそうだと、愚にも付かないことを思ったりする。この帝政の始まりがカエサルであったら、どんなローマになっていただろうか。
名前だけは知っていた暴君ネロの実像に迫る
ローマの歴史を全然知らなくても、本書でつまびらかにされる皇帝ネロの名前はどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか? それもキリスト教関連で登場するユダと同じようにダーティなイメージが付加されて。ぼくも読む前は目次を辿るだけで、残虐な極悪非道なエピソードが描かれているのだろうかと想像しましたが、史実に基づいたネロの生涯を読むと、名君とは言えないまでも、カリグラ帝とどっこいどっこいという感想を持ちました。抜きん出た悪人という訳ではありません。では、なぜ、暴君=ネロというイメージがこれほどまでに浸透しているのか? その理由も冷静な筆致で塩野さんが教えてくれます。納得しました。
新潮社
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