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ローマ人の物語〈18〉悪名高き皇帝たち(2) (新潮文庫)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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名君ティベリウスと暗愚なカリグラ
「カエサルが企画しアウグストゥスが構築した」帝政を確固たるものにしたティベリウス。その死後、皇帝の地位を引き継いだカリグラは、後世、愚帝と評されますが、決して賢くなかった訳ではなく、ティベリウス(とその施策)の不人気の理由を正確に理解し、その反対の(つまり人気を得るための)施策を次々と行います。そして幸か不幸か、それを実現するだけの安定した国家体制と健全な国家財政が残されていました。
廃税、剣闘士試合、戦車競争、海上を馬で渡るというパフォーマンス。財政は破綻し、神君アウグストゥスが使った家具調度品まで競りにかける始末。さらにカリグラは暴走し、先帝たちも望まなかった「神」になることを求めます。そして、暗殺。
「政治とは何かがわかっていない若者が政治をせざるを得ない立場に就いてしまった」不幸。
皇帝就任にあたってゲルマニクスの子供というだけで手放しで喜んだ市民、何の実績もない若者に軍事・政治の全権と「国家の父」の称号まで与えた元老院。彼らはたった2年で手のひらを返すようにカリグラを見放します。カリグラ自身が行った政治のポピュリズムと彼をもてはやした衆愚政治。現代日本にも十分あてはまる示唆を与えてくれているように思います。
ちなみに、本書後半で触れられているユダヤ社会とローマ、ギリシャとの関係についての考察は、ユダヤの特性を理解するのに大変役に立ちます。
普通の才覚が権力を握ることの不幸
二代目ティベリウスによる、ストイックなまでの政治と死ぬまで庶民の人気取りや評判を全くもって気にしなかった性格、そして自分がやるべき事を正確すぎるほどに把握していた言動。その後、全てが揃った状態で第三代皇帝となるカリグラのあまりの平凡さが目立つ。
国庫にたまった莫大な貯金をたった一年で空っぽにしてしまう奔放なサービス。先代が市民に不評だったことを自分は避けたいという気持ちが彼を逸らせる。
権力の全てを手中にして自分がいかに振舞えるか・・・自ら築き上げたものと、譲られたものでは権力の使い方が大きく違う。
ユダヤ人に対しての考察も見逃せない。キリストへの対処の仕方で後のローマ帝国の基盤が変わっていく。そしてユダヤ人の特殊性や今まで平穏であった各地の属州からも不穏な空気が流れだす。
権力を使うか溺れるか・・・公人と私人のバランスをいかにとるか・・・考えさせられる巻だ
ちっちゃな軍靴=カリグラを愛した兵士
歴史上、皇帝カリグラは暴虐の果てに近衛軍団に見放され、報奨金目当てに暗殺されたことになっている。 しかし作者は詳細な研究により、暗殺を実行した近衛軍団大隊長ケレアが、カリグラの父ゲルマニクスの忠臣であり、カリグラを幼少期からまじかに見続けていた人物であったことを突き止め、そこから大胆な推理を働かせている。 そしてその推理は、皇帝暗殺という大罪を実行したケレアとその同士サビヌスの以後の行動〜従容とした死罪の甘受と近衛軍団の皇帝への服従〜を説明するのに最も妥当なものであり、ケレアはカリグラを最も愛した者であったからこそ、自らの命を投げ出して暴君と化したカリグラを処断したのだ。 作者自らが述べているように、推測は推測でしかないが、歴史を血の通った人々の営みとして看破する作者の技量に感服せざるを得ない。
現代への警鐘
ただの気の狂った皇帝かと思っていたカリグラですが、塩野七生の手によって頭の良かった、しかし若くして権力を手にしたため人気取りに走ってしまい、失敗した「一人の人間」が鮮やかに描き出されています。国家のリーダーが民主的な手段によって選ばれるようになった現代、カリグラのような人に国家の舵取りが任せられる危険性が大いにあるのでは、と考えさせられます。 また、もし選挙が行われたとしたらティベリウスは間違いなく落選していただろうという著者の言、民主主義の良し悪しについて改めて考える契機ともなりました。
カリグラ〜
ローマ帝国三代皇帝カリグラ。 カリグラってどこかで聞いたことある響きだと思っていたが、映画だったのか。 かなり過激な映画らしい。 映画の方が気になるぞ。
新潮社
ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫) ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫) ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫) ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉 (新潮文庫) ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下) (新潮文庫)
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